1994.5.13 朝日新聞
ギャラリー白 館勝生・丸山直文展

無著名

「異なる二つの時間が流れる」

 日本の現代美術を世界に向けて発信したいという「VOCA」展
が、この春東京で開かれたとき、推薦されて出品した42人のうち
好評だった館勝生、丸山直文が21日まで、大阪市ギャラリー白で
発表している。
 「VOCA」の意味は「現代美術のヴィジョン(幻視)」だ。こ
こで館が奨励賞を受けた画面は、巨大なガかチョウの羽を思わせる
イメージが中心。今回はそれ以後の新作4点を出したが、すべて類
似のイメージが続いている。
 丸山は、薄い色が画布にしみこんで広がる跡を生かし、木の葉や
枝先の大写しとも見えるイメージを、夢幻的に浮かび上がらせた画
面が主体。ただし最近4年間の絵画5点を出しており、イメージを
読みとれない画面もある。
 二人の画風は全く異質だが、何であるかと決め付けられないイメ
ージを探っていることは共通だ。また、館は素早く描き進めた筆の
跡、丸山はゆっくり、しみていった色の広がりを通じ、それぞれの
時間の流れにも興味を引き付ける。