SHIZUOKA さくや姫 VOL.4 1993.秋号

無著名

「月の光を感じる絵画−館勝生展」

館勝生の作品は、選びぬかれた色彩で描かれた絵画である。形の余
分なものが省かれ、何が描かれているかが認識できるかどうかの、
ぎりぎりの線だけがある。キャンバスの中に見られる光は、まちが
いなく月の光で幽玄が漂っている。それ以上は未知だ。けれども、
館の作品は素通りをゆるさず、観客を立ち止まらせる。植物のよう
でもあり、宝石のようでもあり、昆虫のようでもある。あえて言え
ばロマン派の香りがする。彼は時代をリードする立場にいながら、
正統的な美術史の流れの中にいる。それは、ジャズトランペットの
マルサリスがバッハを難無くこなすことに似ている。1964年生
まれ、大阪芸術大学卒業の29歳。彫刻やインスタレーション作家
が幅をきかす中で、絵画の復活を担うのは館勝生以外にない。